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開発ストーリー

冷間1.5GPa超ハイテン材を使用した車体骨格部品の量産化に成功!

冷間1.5GPa超ハイテン材を使用した車体骨格部品の量産化に成功!

当社は、1.5GPa級超ハイテン材(以下、1.5GPa材)を使用した新型ノート向けセカンドクロスメンバーレインフォースを受注し、2020年10月より供給を開始しました。1.5GPa材を冷間プレス加工で製品化した部品が車体骨格部品に採用されるのは日産自動車では初です。1.5GPa材部品適用開発・量産化チームを代表して5人のメンバーに量産までの苦労や今後の目標についてお話を伺いました。

セカンドクロスメンバーレインフォースとは?




  • どのような開発だったのでしょうか?

    織茂
    自動車業界は電動化や安全・環境性能の更なる向上が求められています。より少ないエネルギーで走行するためには車体の軽量化が不可欠であり、高強度の超ハイテン材を使用することで軽量化と衝突安全性の両立を実現しているため、適用範囲が拡大しています。


    今回、e-POWERのバッテリーを保護する骨格部品であるセカンドクロスメンバーレインフォースを1.5GPa材で製品化できました。1.5GPa材は抗張力が高く、板厚を薄く軽くできる反面、延性が下がり非常に成形が難しい材料です。高度なプレス技術が必要とされるため、一般的に1.5GPaの強度を持つ製品はホットスタンプで製造されています。

    長谷川
    採用された部位は、旧型ノートでは980MPa材を使用していました。1.5GPa材は難しい材料だけど直線的な部品ならば適用できるだろう、ということで製品設計が進みました。

    解析センター 成形解析グループ
    織茂晃一さん
    シワや割れ、スプリングバックの解析と対策検証

    生産技術センター 生産技術グループ主担
    原 史英さん
    金型玉成から生産工場への移管、
    金型の維持管理のサポート
  • 一番苦労された点は何ですか?

    保科
    切断面の遅れ破壊※1の問題です。生産時は問題がなくても何年後かにいきなり亀裂が入り割れてしまうことのないよう、この条件だったら割れないという閾値(ボーダーライン)を設けました。金型で材料を切断するときの切刃の角度やクリアランス※2の量など切断加工の条件を設定することで解決しました。納品された板材の端面をそのまま使えるように高炉メーカーやコイルセンターに切断方法を変更できないか交渉するなど、試行錯誤の末、最終的には金型を作り直して、金型の中で全て切断することになりました。

    織茂
    10ミリくらい跳ね上がるスプリングバックに苦労しました。一般的なスプリングバック見込みでは、下型に取り付けたパンチの根元が細くなってしまい金型強度が確保できないため、解析を駆使してプレスの加工方法などを工夫し、見込み量を削減することに努めました。スプリングバック抑制工法については現場のノウハウを解析に織り込むなど生産技術と連携して解析を進めました。


    材料を切断する際、金型にはたわみが発生してしまいます。たわむと遅れ破壊が発生しない条件(クリアランス)が確保できないため、実験型を製作してプレス時のスローモーションを撮影し、金型のたわみ検証を行いました。実型には対策内容を織り込み、通常の約2倍の強度を確保し、要求精度を満たすことができました。また、伸びない材料のため、形状の修正を入れても予想した見込みが入らなかったり、他の部位に影響が出るなど品質を上げるのには苦労しました。

    半田
    切刃の角度とクリアランスについては、先行技術開発と生産技術に生産要件を提示してもらい運用していますが、従来の金型点検方法や維持管理方法では1.5GPa材には通用しないことが分かり、方法を見直して日常の金型点検に落とし込むのに苦労しました。工場は品質重視で、いいモノを造り続けなければならない使命があります。遅れ破壊対策のためにも確実に金型を保証しなければと強く感じました。

  • 課題を乗り越えられたのはなぜだと思いますか?


    部門間の連携がいつも以上にできていたことだと思います。他部署も含めて集まり、実際に現物を見て課題を共有し、材料に問題があれば先行技術開発も入り、製品形状が良くないとなれば解析もトライに立ち会ったりしてもらった。以前であれば、資料を作成しメールで展開して各部署が対応していましたが、その場で一緒に現物を確認して課題にスピード感をもって進められたことも良かったです。先行技術開発にも工場移管までフォローをしてもらうことができ、源流から工場まで一緒になって立ち上げることができたことが大きかったと思います。

    半田
    量産直前ではなく半年以上も前から生産現場にも課題を共有化してもらえたことで、ルールやスペア切刃を量産開始前にしっかりと準備することができました。より精度よく金型を維持管理するために、先行技術開発や生産技術が一緒に入って維持管理方法を決めて運用しています。量産後の金型管理は工場の仕事という認識ですが、その部分に関しても源流部門と一丸となって取り組めたことが良かったと思います。手探り状態で始まった部品ですが、今後の更なる適用拡大に向けて活動の道筋ができてきたと思います。

    車体技術センター サイマルグループ
    長谷川高之さん
    製品形状の提案、形状データの作りこみ
  • 1.5GPa材に挑戦して得たものは何ですか?

    保科
    初めて量産部品を扱ってみると、実験型と比較して気を配らなければならないポイントの数が全然違いました。車体技術はどういう結果がほしいのか、生産技術は何が必要なのか、工場はどういうアウトプットがほしいのか、下流工程の抱えている課題を知ることができました。部門や仕事の役割が少しずつですが理解できたように思います。

    長谷川
    製品形状を決めるために、遅れ破壊や金型の剛性に対して考慮すべきポイントが分かってきたこと。数十年前は590MPaハイテン材を曲げるだけでも難しかったのに、今では普通材扱いです。技術力に磨きをかけて作りやすい製品形状を開発していきたいです。

    織茂
    CFT※3活動により部門横断的に1.5GPa材に取り組んだことです。今まで行われていなかったCFT活動ですが、定期的に上流工程や下流工程と打ち合わせができたことは良かった。解析の基となる材料データの精度や、力技で押し込んでいたスプリングバックを抑える方法など現場のノウハウを解析に織り込むことができたのも大きかったと思います。


    金型ができあがってからでは解決できないことが多数あり、事前に情報共有して解決しておくことや、工場には移管前に課題を投げてスムーズに量産できるように準備期間を設けておくなど、すごく多くのことを考えさせられました。

    半田
    情報共有によって、金型ができるまでに携わった人たちの努力が非常によく見えました。工場は最終的に金型というバトンを受け取ります。その維持管理の重要性を改めて感じています。以前、「いい製品はいい金型から」という言葉が社内報記事にあったのが印象に残っています。決められたことをしっかり守って運用していきたいと思います。

    先行技術開発センター 車体グループ
    保科洵子さん
    1.5Gpa材遅れ破壊の検証・評価

    栃木工場(小山)技術課
    半田大希さん
    金型の品質維持・管理

  • 最後に、次の目標は?

    保科
    今も遅れ破壊の発生メカニズムの解明に向け検証をしています。更に確証を持って製品を送りだせるようになりたいです。ほかの量産部品でもお世話になると思うのでよろしくお願いします。

    長谷川
    1.5GPa材が適用される部品も増えていくでしょう。複雑な製品形状もコントロールできるような工法開発を更に進めていきたいと思います。

    織茂
    将来は複雑な製品形状も適用が進んでいくと思うので、ねじれないような工法であったり、材料にばらつきがあっても安定した製品品質を出せる工法開発を提案できるようにしていきたいと思います。


    材料が硬く強度が上がれば、更に成形難易度が高くなります。しかも開発日程は短くなってくる。品質をまとめるためには部署間の連携をしっかりやっていきたいと思います。

    半田
    1.5GPa材の部品を生産するのは今現在、栃木工場だけです。今後も他部門との密な連携で進めていくことが大事だと思っています。

    部門間の連携で源流から工場まで一体となって量産体制を作り上げられた


    ※1:材料に含まれるカーボン量が多くなると切断面の残留応力により微小亀裂が発生し、その部分に水素が侵入することにより時間が経ってから亀裂が発生すること
    ※2:上刃と下刃をかみ合わせた時のすきま
    ※3:クロスファンクショナルチーム

    ご協力いただいた1.5GPa材部品適用開発・量産化チーム
    5人の代表メンバー
    ※当日、半田さんにはリモートで参加いただきました


  • (所属部署、役職は2021年8月当時)